山田和義の数珠の話

山田和義数珠の話(11)ディフュージョン製品

一級品の虎目石

今回は弊社のディフュージョン製品(ランクダウン製品・普及品)についてのお話をさせて頂きます。

この「数珠の話」の第3回目で「数珠玉の研磨と艶出し」というテーマで数珠玉の艶の出し方について掲載しましたが、その際にご紹介したのは、以下の様な艶出しと玉の加工です。

(1)薬品による磨き。

(2)コーティングによる艶出し 
加圧による含浸加工。早く磨くことができコストダウンに成りますが、再度の研磨は不可能です。薬品研磨よりも寿命が短いのが欠点です。コーティングは加圧による含浸加工ですので、傷もひび割れも色も分からなくなり、生地の品質を無視した艶出し加工です。

(3)共摺り磨き 
振動する容器であるバレルに入れた、玉・磨き砂・研磨剤(研磨する玉と同じ硬度で粉砕された細かい材料)により、共磨きすることで時間をかけて行います。この共磨きにより、数珠の表面、さらには穴口も穴中も磨かれます。ガラスはガラスで、水晶は水晶で同質の素材(硬度)で磨きますので時間的には3日間〜1週間かけて磨きます。
 コストはかかりますが、耐久性が高いので念珠など、手に触れるものの研磨はこの手法で行います。

これまで弊社では台湾の数珠加工工場で「共摺り磨き」された玉を使用してきましたが、ディフュージョン商品は「含浸・コーティングによる艶出し」商品であり、随分とお安く提供することができ、すでに反響を頂いております。

 山田念珠堂の一級商品に使用する「共摺り磨き」の玉と、ディフュージョン商品に使用する「含浸・コーティングによる艶出し」の玉を紹介してみます。

まずは原石の扱い方です。水晶・メノウ・ヒスイなどの天然石の場合、「共摺り磨き」による艶出しのみで仕上げることのできる材料は、原石の一部です。同じ原石からでも傷のある部分は「含浸・コーティング加工」が必要となります。傷のある原石を玉に加工し、「含浸・コーティング仕上げ」を行いますので、廃棄される石はほとんど無く、全てを製品として安価に提供できます。
市場で安価に流通している数珠の中には、このようなコーティング・含浸加工された製品が多いにも関わらず、一級品と同様の価格で販売されているものもあります。作業工程についての理解と知識が、業界として薄いことも影響しています。

さて、次に仕立ての面です。「共摺り磨き」による艶出しという工程は、後の工程にも手間と時間が非常にかかります。共摺りの後に、色彩豊かな石玉の中から数十個を選び抜き、玉の色合いを揃えて数珠を製作するのですからコストがかかりますが、美しい数珠をつくる為には必要です。
 一方で人工的に「コーティング着色」した製品は、色が一定である為に玉の色揃えも単純で、選別のコストもかかりません。

次に、仕立てに大きく関わる穴の研磨について。前述しました通り、「数珠の話」の第3回目「数珠玉の研磨と艶出し」では研磨の大切さを指摘しました。「共摺り磨き」の場合は玉の表面はもとよりのこと、穴の中まで研磨できるために、玉の品質は高くなります。「含浸とコーティング」のみで仕上げ加工した玉は、穴の中の磨きが不十分です。という事は、数珠の通し糸が切れやすくなるのです。

 弊社から提供するディフュージョン製品は、穴の中の磨きが不十分な玉に対応した「なるべくなら切れにくい糸」を採用することで、皆様に提供させて頂きます。 
 その糸とは、ポリエステル素材の「PE」という、縦・横・捻じれに強いものです。弾力性と収縮性がありません。その為、リボン状に平糸を作りこれをツズラ織に織り込み、撚りを掛け合糸し、弾力性と収縮性を作り出しています。色糸の開発もでき、赤・ピンク・紫・グリーン・茶・白色を染色できましたので、本格的に製品供給が可能となりました。

 最後に、組み上げの工夫です。糸が硬いという性質上、手組ができないので、弊社の自動組機を改良し、組み上げのハードルも超えることが出来ました。
 ご承知の通り化学繊維ですので単価を安くするのと同時に、大量の発注でないと製造出来ない壁は、メーカー様とその問屋様のご協力により、実現したものです。
 弊社のディフュージョン商材はさまざまな工夫により完成に至りましたが、原材料はあくまでも海外品質(2級品)であり、天然石ですが加工品であることには変わりがなく、1級品ではありませんので注意が必要です。(表示義務があります)。

 ところで、腕輪念珠では製品化のハードルも低いと思われるかもしれませんが、大きな問題が別にあります。念珠よりも長い時間身に付ける腕輪念珠。はじめは艶のある玉で見た目が綺麗な腕輪でも、コーティング加工の玉はすぐに艶が無くなり、マットで磨りガラス状のような質感に変化します。実際、1週間も経たないうちに玉の艶が無くなった事例を確認しています。腕輪念珠に関しましては、共擦り磨きの玉をオススメします。
 一番の問題は、価格面。1級品と2級品の等級は価格にも反映しますが、加工品の場合、等級価格は存在しません。加工品は一手の価格でありキリ価格ですので、ご利用される場合は適正な値段でのお取引をご確認願います。

 今後も、数珠に関する品質表示・産地表示は厳格にしていきます。

一級品とディフュージョン製品に関してはこちもご覧ください。