山田和義の数珠の話

山田和義数珠の話(15)唐木の木玉・その1

 さて今回からは、念珠素材としては欠かすことのできないアイテムである「唐木の木玉」についてお話をさせて頂きたいと存じます。

まず「唐木とは何ぞや!」ということですが、皆さんご存じの通り代表的な唐木には紫檀・黒檀・鉄刀木があります。これらの材木を総称して「唐木」と呼びますが、大変比重が重く重硬で日本では産せず、古くは東南アジアから、現在では中米・南米・アフリカなどからも輸入される高級材木の総称です。

 東南アジア産の唐木は古くは奈良時代頃より唐、その後の中国(宋・明)よりもたらされた木材であり、正倉院に収められた宝物には紫檀や花梨、白檀、沈香等で作られた工芸品があり、日本の文化史を彩るものとなっています。この様に宝物工芸品として永く残る理由には木質が菌や昆虫に害され難く綿密であり、木目が美しい上に硬く耐久性があり、よく乾燥された材料は寸法の伸縮が少なく安定性が良い特性があるからです。

 我が業界においては、仏壇や指物家具、念珠等に多く用いられてきました。近年ではCITES(サイテス・ワシントン条約)により紫檀であるダルベルギア種(Dalbergia)に分類される樹種が附属書Ⅱに掲載され、紫檀は厳し商業取引の制限の中にあります。つまり、仏壇公正競争規約における紫檀や本紫檀に分類される材料は、カリンを除けば入手が非常に困難になったということです。

 インドネシア・スラウェシ島で産出される縞黒檀、学術名ディオスピロス・セレビカ(Diospyros celebica)は国際自然保護連合によるレッドリストでは絶滅危惧Ⅱ類に分類されています。つまり、伝統的な東南アジア産の唐木材ばかりでなく、紫檀や黒檀のように「色のある材木」は全て希少材ということになります。

紫檀や黒檀の解説をする前に木材の加工と仕上げに付いてお話をしておきたいと存じます。
 原材料の丸太が輸入され厚板状に加工されます。材によっては特に黒檀はシラタの部分が多く中心に近い部分のみしか製品に成りません。使われる材料は板材なのですが、シラタ(白太)以外の有効部分のみにセンター穴を軸具として刃物で周りを削り出し珠を抜いていきますので、出来上がりの板は蜂の巣のように穴が沢山開いた状態になります。
 また板部の厚みを調整して珠のサイズを決めます。そして出来上がった木玉は球形の為、持つ色合いには所々にムラがあり濃淡が出てしまいますので、色統一のために若干薄化粧を施します。(輸入貴石で御紹介したような厚塗りのコーティングではありません)

 木玉加工で肝心なのが穴あけですが、木玉の穴は板目に対して垂直に開けるのが原則です。これを横挽きといいます。柾目に沿って(縦挽き)開けると中糸を通した時に力がかかり割れる確率が高くなる為、何倍もの手間をかけても、念珠珠は横挽き加工を致します。
 加工が容易な縦挽きの珠(海外製品が多い)で念珠用としたものもよく見ますが感心致しません。これでは木の目を味わう意味においても不合理といえますでしょう。
 また、海外で作られる数珠の玉の中には輪切りにした木材から玉を削り出すものがあります。つまり、板目・柾目関係なく、という加工方法ですが、刃物の消耗が少なく作る側にとってはメリットがありますが、感心しません。
 加工上、多少の仕上げ化粧をすると前述しましたが、最近ではシラタ部分を製品にして黒く染めたり、赤く染めたり、完全加工品として安価に出回っていたり、全く違う材料を使用し、完全に染めた材を銘木の総称で販売されている事例もあります。

 特に日本において、房組加工が難しくなってきている近年、中国より唐木(杢珠)・貴石を問わず、念珠完成品が輸入されているので注意が必要です。
 原材料は別として、材料の加工地・房組加工地・加工業者のハッキリした念珠メーカー(念珠房組工場の有するメーカー)を選択されれば、自信と確信の元になると存じます。